《膝の反動を応用した声の出し方 その2》

D 膝を中心とした力学的反動作用の実習法
歌は、子音・母音などから出来ているが、何と言っても母音発声が確立していれば、歌の骨格は成立する。
母音(ウ)ア、(ウ)イ、(ウ)ウ、(ウ)エ、(ウ)オをLegato(レガート)で歌うためには(ウ)の補助母音を母音の前に無声で、口唇で(ウ)を作ってから母音を発声する。リツリレーマンも「歌唱法」の中で、補助母音に触れている。
A. 実習法
母音発音と同時に、膝の反動を加える。膝で床を蹴ると、人体はその反動で上に浮き上がる。膝で床を蹴る度合いの大小によってp mp mf f ff pp pppの、変化する音量が得られる。
膝の反動を使わないとAEIOUの母音のひびき、即ち共鳴も快く、楽に、息のつづくまで良音のひびきとして得られない。

B. 発声器に部分的に無理な力を加えない
歌詞の発音を、くちびるなどで作る以外は、すべて力学的(ひざ)反動の調節で作音する。
E 膝反動を自己歌唱全声域に利用する
低・中・高音域をもった人は、その低音から高音まで、ひびきを反動で作り、同時に反作用で音を支え、発声器には無理をさせないで共鳴させる。(筆者もBDを反復練習して傷害音を取り除くことができた。)
F 膝反動を、高度な音楽表現に応用する
A. 自己の歌唱全域がmessa di voce(メッサデボーチェ)で発声できる
「正しいpppを歌うには、頭部共鳴を基礎におき、首やノドの筋肉に一切の圧迫やりきみがあってはならない」(フックス著、歌唱の技術より)。今、母音で発声してみるとDで説明した通り、膝のゆれる反動の程度で色々の大小を表現する。p(ピアノ)の場合は強い振幅で、床を蹴って、音量を増大する。

B. 高音での(デクレシェンド)も発声できる C. 反動を応用すれば高音のデクレシェンドも歌える
最高音のデクレシェンド(だんだん弱く)は、なかなかむずかしい。名著「歌唱の技術、すぐれた歌唱法への道」フックス著(音楽之友社発刊)の99ページに「有名歌手でもクレシェンド(だんだん強く)は歌えても、高音域では、完全なデクレシェンドは歌えないことが、ままある。(省略)デクレシェンドは、完全なテクニックを要求する。カルーソ(不世出の古今未曾有の名テノール)でも、高音のデクレシェンドはさけていた。」と書かれている。 今、下図を見てデクレシェンドを説明すると、出だし(アタック)のA音のf(フォルテ)は、急激で大きなゆれを膝を蹴って作り、E(エ)まで、強いひびきがつづき、I音あたりから膝ゆれを細かくし、OUは、ほとんどヴァイオリンのブィブラードのようにデリケートにゆする。これは途中でひびきが切れてはいけないから、十分な反復練習が必要である。

次のページへ